by キャサリン・ストール(ジャーナリスト)

最初にあくまで個人的な意見ですが、私はドナルド・トランプ氏のファンではなく、今後、彼を応援することはありません。そしてアメリカがトランプ大統領という新しいリーダーを擁した今、親として6際の娘に何を伝えるべきか、大変難しい立場にいます。娘は私が、クリントン大統領候補が当選できなかったことに大変なショックを受けていることを、もうちゃんと理解しています。

今まで娘には、お年寄りを大切にし、先生、校長先生、そして国の大統領にリスペクトを持つよう、教えてきました。

私は、アメリカ人が最も大切にしてきた自由と平等に基づいたアメリカの価値観を根底から覆そうとしている大統領を、彼が大統領だからという理由だけで、尊敬しなさいと娘に伝えるべきなのでしょうか。

私、そして多くのアメリカ人は現在、自分たちが選んだ大統領が市民権を侵害し、人民すべてを受け入れ平等に権利を与えるというアメリカの基本精神を無視し、間違った方向に政府をリードしていくことで国民に不安を与えているという事実に直面し、まるで未知の世界に入ってしまったような状況におかれています。ナルシストで排他的な人物が大統領になることなど、誰が想像できたでしょう。

私は、自分たちの選挙で、国の最高権威にこのような人物が選ばれたことに怒りを覚え、自分たちが選んだ州知事や国会議員たちが彼の無茶苦茶な政策を止められないことに怒りを抑えきれずにいます。そして、多くの善良な市民が、今夜、家族の待つ家に帰れるのかどうか不安を感じながら、職場に、学校に、遠方に出かけているという事実に絶望さえ感じています。アメリカは彼らにとって、安全なふるさとであるべきなのに。

しかし自分のこの怒りをそのまま娘に伝えることが正しいのか、果たして娘がそれをどこまで理解できるのかは疑問です。娘に、あなたの国の大統領は、リーダーでいる資格のない、危険で嘘つきで、今後彼が、私たちの生活にどのような悪影響を及ぼすのか予測がつかない人物である、と教えるべきなのでしょうか。私にはわかりません。

私の友人は、同じように悩んだ末、2歳と4歳の娘に「アホトランプ」「トランプなんか大嫌い」と冗談めかして伝え、娘たちと楽しく「アホトランプ」「トランプなんか大嫌い」と唱えて遊んだそうです。彼女は大統領に関する悪いニュースにあふれかえる毎日を、そうやって冗談にして明るく過ごそうとしたのです。

でも彼女の夫は、家に帰って娘二人が「アホトランプ」「トランプなんか大嫌い」とふざけているのを見て彼女に、確かに自分たちはトランプに反対してはいるが、娘たちには自国の大統領に尊敬を持つよう教えるべきだ、と言ったそうです。

この話を聞いて、私も最初は彼女の夫の言うとおり、子供に対しては大統領に敬意を持つよう教えた方がいいのではないかと思いました。そうは思いましたが、でもその前に、大統領には、国民から敬意を受けるに値する人物が就任するべきだと強く思ったのです。もしその人物が敬意に値しないのなら、反意を表明できるのが資本主義であり、私たち国民にはその権利がある、ということを、娘にまず伝えるべきだなのではないかと。

自分たちのリーダーを尊敬することは大事です。でも間違っていることを間違っていると表明するのはもっと大事なことなのではないでしょうか。

トランスジェンダーの学生から、自分が選んだ性別に沿ったトイレを使用する権利を剥奪すること、教育省のトップに全く未経験の素人を任命すること、移民の大人、そして子供にまで、全員を追い詰めて国外退去にしてやると脅すこと、女性を蔑視するような言葉を公然と使うこと。私は自国の大統領がこのような発言を繰り返すことを、絶対に、何があっても、受け入れることはできません。

例え私の娘のような年齢の子供であっても、間違っていること、受け入れるべきでないことは、きちんと表明していいと知るべきだと思うのです。

この政府が、間違っていることを無理やり押し通して法律を制定していくとき、娘には、ママは最後まで反対し、間違ったサイドには迎合しなかったと知ってほしい。

大統領に敬意を表すことを娘に教えるのは、敬意を表明するべき人物が大統領になってからでも遅くない、そう思っています。